よく観えるメガネ

人生を豊かにするためのたった一つの方法

 

メガネをつくる時のハナガタの存在って何かわかりますか?(笑)それは、掛け心地に大きく影響するものなのです。何かと言うと、鼻盛の部分です。フレームからぷくっと盛り上がった部分。これが鼻にフィットするかどうかで大きく掛け心地が変わります。

当然、鼻の形状は皆違うので、それぞれの鼻にいかにフィットさせるかが肝心です。それには各人の鼻に合わせて適切な形状の鼻盛を造らなくてはいけません。そこで僕は、オーダーしていただいた方の鼻を造ります。まず鼻の型取りをし、そこへ石膏を流し込むと、その人の鼻と瓜二つの石膏の鼻が出来上がります。オーダーが入る度に鼻の数も増えていきます。そんな訳で工房はどんどん白い鼻が集まり、木製メガネをつくる上で、なくてはならないハナガタ的存在です!

そして、制品となるための最終仕上げとして、磨く工程があります。

これは、最終工程になりますが、表面を滑らかにし、光沢を出すために不可欠です。通常プラスティックでできている眼鏡は、ガラと呼ばれる機械の中に入れ2~3日磨きをかけます。ガラとは、大豆よりも少し大きい粒状の研磨剤がたくさん入っている大きなタンクです。その中へ眼鏡の部品を投入し、タンクローリ車のようにゆっくりと回すことでガラがメガネ部品の表面を均等に研磨し、表面が整います。もちろん、これは大量生産のための方法ですので、大変効率がよく機械さえ回しておけば、数日で仕上がります。

しかし、僕の場合は、すべて手(Hand power!)により「磨き」ます。

これが結構大変な作業で、数ある工程の中で一番時間がかかります。荒削りをした状態から、ヤスリとサンドペーパーを用いて少しずつ整形し、磨いていきます。機械にかけて仕上げるのではないので微妙なカーブを付けたり、エッジ(角)をたたせたり、丸めたりその時感じた感触やイメージをそのまま形に表すことができます。少しの仕上げ方の違いで、印象はまるで違うものになります。

これが手づくりの魅力です。一つ一つのメガネの個性を活かすように、メガネが一番魅力的にみえるにはどうすれば良いかを考えながら0.0数ミリの単位で整形していきます。そのようなやりとりが非常に重要で、メガネに命を吹き込む作業になります。

相手は木製メガネですが、向き合う作業は言うまでのありませんが、非常に大切です。向き合うというと一般的には人を対象に用いる言葉ですが、人だけでなく、もの対しても向き合うことが重要です。それこそが人を人生を豊かにしていくことに繋がると考えています。

実際、ちゃんと人やものに向き合って生きている人は少ないのではないでしょうか?

人に対しての向き合い方で言うと損得勘定で付き合ったり判断を下していないでしょうか?その人に本当に必要な言葉を掛けられているでしょうか?傷をつけてはいけないと言うべきことを控えたりしていないでしょうか?時には相手に対してキツイ言葉を言わなければならない時もあります。相手のためと言いながら自分を守るような行動をしていないでしょうか

日本は思いやりの文化が根付いていおり調和を重んじます。それは非常に良いことなのですが、過度な遠慮からは本当の信頼関係は築けません

また、ものに対して日本人は他国の人に比べ比較的大切に扱う傾向にあると思います。ですが、本当にそのもののあるべき姿を保っている事は少ないのではないでしょうか?するべき姿という言い方をしましたが、例えば窓ガラスなら手垢や汚れなく透明であること。例えば扉の閉める時にバタン!と締めずに扉がスッと収まるような閉め方をするとか、例えばソファの置いている位置。その部屋の中でソファが一番インテリアとして輝く位置に置いているでしょか?使いさしの使い捨てボールペンがたくさんありませんか?近年便利と引き換えに使い捨てのものが、出回っていますが無駄な使い方はしていないでしょうか?

そうやって考えると今の日本は物質的には豊かになっていますが、ちゃんと向き合う機会や大切さが失われつつあるのではないでしょうか?こういったことをちゃんと意識して出来る人が増えれば日本はもっと成熟した強い日本になれると思っています。

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  • この記事を書いた人

Kawamura Hiromitsu

「教育」21年間公務員として教鞭をとる→「モナコ滞在」にて映画のような日常を知る→起業し事業を営むかたわら社会貢献活動にも力を入れている。モナコをはじめヨーロッパと日本を行き来する生活を送り人生を愉しんでいる。

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