そして第1号を完成させてからは、改良、改良の毎日です。やはり細部にわたっては納得がいかず、次はこうすればもっと良くなるだろう?とか想像をめぐらせ、またまたトライ&エラーの日々です。必要に応じて鯖江に出向きアドバイスを受け、自分なりに工夫を加えました。長い歴史上、木製の眼鏡には前例がありますが、僕の目指す眼鏡づくりに関しては、ドンピシャな前例もないので、様々な問題が出現します。木という素材についての勉強、入手ルート。それから加工するための道具や機械の工夫です。
実際、加工をするためには機械がなくてはなりません。基本的には手づくりですので、やすりを使ってかたちを整え、仕上げにサンドペーパーで磨くのですが、やはり効率よく作業し精度を出すために機械も時に必要になってきます。最近はホームセンターでも様々な道具や機械が置いてありますが、眼鏡の加工を前提にしているものはモチロンありません。作業を確実なものとするため、ジグの製作や、特別な加工をするための台を溶接して作ったりと眼鏡制作のための機械製作にいろいろな工夫が必要でした。
また眼鏡の素材となる木ですが、良い素材なしに木製眼鏡づくりを語ることはできません。木には個性があり、様々な特徴を持っています。非常に奥が深く難しい素材です。以前にもお話したように僕は眼鏡や木を扱う仕事とは無縁の家に育ちました。木との接点と言えば、幼い頃から工作が好きで金づちを片手に木材をトンカチ、トンカチして様々なものを作った想い出はあります。が!そんなノリで木という素材を扱えるはずもありません。また、入手ルートや数えきれないほどの木の種類、特徴についての知識をどう得るかなど問題山積でした。しかし、それら様々な問題を解決したのは不思議な縁のおかげでした。
何か新しいことに挑戦すると必ず目の前に壁が立ちふさがります。「新しい事に挑戦すること」は「より大きな問題を抱えること」と同義語です。今までに経験のある事をするのは楽です。同じような考え方でアプローチすればできます。ですが、新しい事に挑戦するには、それに見合う新しい考え方で行動に移さなければなりません。そして僕は常に成長を遂げていないとダメだと考えています。成長とは、過去の延長線上に生きることではありません。成長があるのは、過去やったことがないものに向かって挑戦することによってのみ、得られるものです。そして、それは自分の不得意なものほど成長に繋がります。逆に言うと、自分の得意なこととは、過去自分がやってきたことなので、もうできるのです。そこに成長はありません。頑張らなくてもできるのです。なので、自分の不得意なこと、やったことのない物事にこそ成長の可能性があり、人生の旨味が凝縮されているのです。