よく観えるメガネ

感謝禁止

 

早速、Emailにて福井県鯖江市の眼鏡を製造メーカーの社長へ連絡をして、数日後その社長のもとに伺いました。この出会いが僕の人生を変えたと言っても過言ではないと思います。

そこでは、一日体験教室でプラスチックの眼鏡作りを体験させて頂きました。もともとモノづくりが好きだったので、一日のめり込んでしまい、あっという間に時間が過ぎました。この体験ではフレームとテンプル(耳にかかる腕の部分)を予め自分でデザインした図面にあわせ暑さ5mm程度の板状から形を切り出し整形していきます。それをプレスにかけて立体的にする行程を一通り学びました。

その社長との出会い、その工場の匂い、教えて頂いた方の人柄、京都から鯖江市までの道中の緊張感、やっと眼鏡に近づけるという期待、今でも鮮明に覚えています。

感謝 感謝 感謝!

いや、感謝は禁止!なのです。

なぜ感謝は禁止なのか?感謝という言葉は都合がよくて、ほとんどの場合、感謝します!とお礼を言った瞬間、感謝を忘れてしまうんですね。本当に感謝するなら、ちゃんとその気持ちを持ち続け、何かしてもらった事に匹敵する以上のお返しをする事が重要です。返し方はいろいろあります。今回の件で言えば、メガネの制作工程を教えてもらったので、それをちゃんと自分のものにして木製メガネを完成させて世の中に出す。新しいメガネの分野をつくり社会に貢献し、その社長からは部品を買う。これをちゃんとすることが恩返しです。感謝します!とだけ言ってる人はそこまで考えないでしょう。だから感謝は禁止なのです。感謝をしたところで発展性がありません。ちゃんと形にして返す。それが大切です。

話しをもとに戻すと、僕はもうこの時点で眼鏡の作り方はほぼ理解し、プラスチックの眼鏡なら誰に頼らずとも作れるまでに習得していました。なぜなら、自分が創りたいのは全人未踏の完璧な木製メガネです。なので、プラスチックによるメガネ作りは普通にできないといけません。なので一日で習得すると「決めていた」からです。

そして、帰り際その工場で、眼鏡の部品も分けて頂き、京都にもどった僕は、今度は木製での眼鏡づくりに挑戦です。

自宅の一角に工房を作り、毎晩よなよな制作に励みました。最初からうまくいくはずもなく、当然トライ&エラーです。なにせ木製ですので、プラスチックのように熱を加えての加工もできないですし、削り過ぎると足すことは許されません。無垢の塊から切り出し制作するのですが細くすること=折れ易くなります。ですが、木で出来る究極のデザインまで攻めました。その結果、十数時間という作業の後、もうちょっと!という所で折れるなんてことは度々ありました。

完成までの何十工程とある中でちょっとでもミスをすれば最初からやり直しです。運良く最後の工程まで無事たどり付いたかと思うと、仕上げで機械にはじかれてポキッ!数限り無く失敗を重ね数日後、やっとの想いで第1号を完成させることができました。

今からお話することは後に感じたことですが、最初に作った眼鏡って技術的には荒削りで完成度は低いのですが、不思議な魅力があります。無骨だけれど味わい深い魅力です。木という素材の特徴や美しさと、眼鏡という機能が非常にバランス良く保たれているといった感じです。

その理由の一つに考えられるのは、やはり最初の「木で眼鏡を作るんだ」という勢いや想いでしょうね。

迷わずに作っているので、ダイレクトに自分の手を通して形づくられるのでしょう。ややもすれば手が慣れてくるときれいに仕上げることができるようになってきますが、最初に作ったものは、へたうまというか不思議な魅力があります。

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  • この記事を書いた人

Kawamura Hiromitsu

「教育」21年間公務員として教鞭をとる→「モナコ滞在」にて映画のような日常を知る→起業し事業を営むかたわら社会貢献活動にも力を入れている。モナコをはじめヨーロッパと日本を行き来する生活を送り人生を愉しんでいる。

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