宇宙からのプロポーズ

結果は想いの総量

そして、人生を愉しむシンポジウムも終了し、みなそれぞれの地へ帰っていった。東京近辺在住のクラブメンバーは2次会を愉しんでいた。みな盛り上がっていた訳だが、そこにいた一人の挙動が可笑しい。その一人とは首が傾いた彼であった。彼はなにやらスマホを覗いている。様子がおかしいと気がついた周囲の人が声をかける。スマホに入ってきたメールにはこのように書いてあった。

「北海道の沖合で発泡スチロールの塊を拾った。無線の電波を調べてあなたに連絡をした。これはあなたのものではないですか?」

といった内容であった。そして、その画像を見ると、なんと!!!APOLLO29ではないか?!!!ただ、その姿は包丁により真っ二つにぶった切られていた。

拾った方は漁師の方で、仕掛けた網にかかったようだった。妙な獲物確保!(笑)。その物体をぶった切ったら無線機が出てきた。無線はユーザー(個人に割り当てられる電波)が登録されていて登録一覧から彼のメールアドレスを見付け、わざわざ連絡をして頂いたという話である。拾われた場所はもう数キロいくとロシア領域だったらしくギリギリの所で回収されたのである。

その場は異様なくらい盛り上がり、回収できた奇跡を喜んだ。そこで一人冷静なクラブ員が「それいつ連絡入ってたんですか?」それに対して「ちょっと待ってくださいね~。んんん~、お昼ですね!」そこにいた皆ドッヒャーーーン!である。シンポジウムやってる時に発表できたやん!というオチであった。

見つかったことは確認できたものの、やはり宇宙を撮影できているかどうかが成功の鍵である。そして、まっ二つになったAPOLLO29を宅急便にてプロジェクトリーダーの所へ送付してもらった。数日後、荷物が届き記録していたカメラを手にした。防水をしていたにも関わらず中には海水が入っていた様子だ。そして、カメラに挿入されているSDカードを取り出しキレイに水道水で洗い乾燥させて、いざPCのSDスロットに挿入。。。

見られるか?

見られたとして、ちゃんと撮影できているだろうか?

ハラハラ、ドキドキ、、、

デスクトップ上でSDカード認識!

それをクリック

一応ちゃんとファイルは表示されている。

そして、撮影データをポッチっと

さあ、どうか

おめでとう!!!!!!!!

打つ上げから回収までちゃんとリアルに撮影できていました!

もう、その動画を見た時は感動につぐ感動!!!

我々が創ったAPOLLO29はちゃんと宇宙の成層圏に行き一時も休むことなくその様を撮影してくれていた。地上を飛び立った瞬間。あっという間に地上の我々は小さくなっていき、1分程度で雲の中へ。雲の層をすぎると太陽の光がどんどん強くなっていく。気温も急激に下がりデジタルフォトフレームの画面に霜がおり始める。しかし、みなが映っている中心部だけは凍らない。そこにはクラブメンバーの顔がしっかりと映し出されていました。流石だ!やがて成層圏に入り宇宙から地球を見ている高さに到達。この高度では太陽の光を遮るものはなく、力強く眩い光が差し込んでくる。今まで見たことのない光。そして、落下時には北海道の大地を上空から捉えていた。またたく間に海にポチョンと落ちる瞬間もすべて録画されていた。

そう!われわれのプロジェクトは成功したのだ!!!

我々のプロジェクト。その場での回収はできなかったものの。結果としてちゃんと手元に返り、打ち上げから着水まで全てを記録することができた。

回収できたことは奇跡に近く、我々の熱意や執念が引き寄せた結果だとクルー全員痛感し喜んだ。みなの熱量がこの結果を引き寄せたのだ。

エクスプローラーズクラブで大切にしている言葉がある。

「結果は想いの総量」

まさに今回の出来事でリアルに感じることができた。機体の製作、関係各所への申請と承認、打ち上げ場所の設定、気象データの情報収集、あらゆるリスク管理、上質な移動空間、渾身の創作劇、上げだすとキリがないくらいのドラマがある。それらを必死にみなが動いた想いの総量が結果となって現れたのだ。

あれ?何か忘れてる???

あっ、そうそうプロポーズの話♡

プロポーズの動画もちゃんと宇宙空間で撮影されていました!しかしマリッジリングは海の底深くに沈んでいったようです。その後のプロポーズも深海にのまれませんようにと祈りつつ。

後日、のちにアイアンマンとなる彼はプロポーズの動画をiPhoneに入れ、彼女を神戸の素敵な夜景のみえる山に連れていき、タイミングを見計らって

「実は大事な話が。。。」

と言ってその動画を彼女に。彼女の答えは、

六甲山のその暗闇に。。。。またもや沈むのか?!(笑)

すると、彼女は満面の笑顔で

「はい!お願いします!!」

と。その二人には今は子供ができ3人で宇宙に行こう!という話は微塵たりともでてないらしい。

<完>

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  • この記事を書いた人

Kawamura Hiromitsu

「教育」21年間公務員として教鞭をとる→「モナコ滞在」にて映画のような日常を知る→起業し事業を営むかたわら社会貢献活動にも力を入れている。モナコをはじめヨーロッパと日本を行き来する生活を送り人生を愉しんでいる。

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