宇宙からのプロポーズ

成功への異常なこだわり

因みに我々のような素人が風船ロケットを打ち上げて初回で回収できる確立は5%以下と言われていた。しかも動画撮影を成功させるとなると更に確立は低くなる。そんな状況だった。先にも書いたが、風船ロケット自体は前例がある。それを専門に行っている人、気象観測用に気象庁が打ち上げている例など。しかし、それらはちゃんとした研究機関と組み、なんども実験を行い成功させている。というか、数打った中で一握りの回収をもって成功と言っている。我々は初めてで、しかも自分達の力だけで宇宙撮影とプロポーズという遊びを完遂させるのである。なんていうロマンだ。

回収班による捜索は続いている。時刻は正午をまわっていただろうか。もうAPOLLO29は帰還してる時間だ。しかしまだ見つかっていない。。。

クルーたちは焦る気持ちをおさえ、その可能性にかけた。

受信した無線電波から位置を割り出すも整合性にかけるデータであった。この時の可能性としては、宇宙へ到達後帰還。着地場所は阿寒湖から東に数十キロ離れた牧草地、もしくは海だった。もし海なら上空からの捜索しかない。これは前述したように天候などの影響で捜索不可能だった。ならば牧草地にかけるしかない。回収班は、ひたすら広い広い広い牧草地にAPOOLO29を求めて探し回った。

夕刻、太陽が沈み始め、あたりがぼんやりと暗くなり始めた。暗くなっては捜索はできない。ベースキャンプを張っている打ち上げ地点に戻ってくるよう指示を出さざるを得なかった。

この時点で、落ちてきたAPOLLO29をキャッチして、その機体に仕込まれていた指輪を取り出すことは実現不可能となった。

今更ながらだが、プロポーズをする(後にアイアンマンになる)男はこの場にいたが、お相手の男性!いや女性は大阪にいた!(笑)

当初のプロポーズ大作戦から方法は少し変更になっているが、無事回収してプロポーズ動画が撮れていれば、それを使って後日プロポーズすることにしていた。

時刻は18時を過ぎただろうか、回収班が戻ってきた。そして、APOLLO29捜索に関しての作戦会議が開かれた。結論は、我々の滞在日程内での捜索は天候や位置情報の不確かさから難しいと判断した。

そして、クルーはジュームズに乗り込み東京への帰路についた。

東京への帰りのジェームズ車内は暗く思い雰囲気に。。。

にはならなかった。落ち込んだところで何も得られるものがないからだ。落ち込んでいる暇があれば、何か行動に移す方が良いに決っている。

それを理解していても正確な表現をするなら、回収できなかったショックを胸に抱えながらも意識的に明るく楽しくなるよう努めていた。

ということで、帰りの道中は、今回の総括と今後のことを話す時間となった。もちろん、道中の全てを愉しみながら。

ボスからの総括。

一言目。「エクスプローラーズクラブで今までやってきた冒険はすべて成功させてきた。このプロジジェクトの失敗はクラブ創設以来の出来事で非常に大きな罪(この言葉であったかは定かでないが、重大なことをしてしまったと記憶している)です。今回参加したクルーは以後3年間、冒険禁止だ。」と宣告された。冒険禁止=自分の成長のためのチャレンジが一切できない。クルーの中には、これは死ぬも同然(生きている実感が持てない)の状態であると感じたものもいた。

そして「冒険3年禁止」から逃れるには、1週間以内に宇宙撮影を成功させるか、もしくは個人個人で何か新しい冒険を成功させるか、この2択だった。それを今決断しなければならない。今晩考えますなどと悠長なことを言える状況ではない。

数秒後、一人のクルーが「宇宙撮影を再度挑戦して成功させたいです!」こだまするかのように別のクルーもまた「宇宙撮影をやりたい」別のクルーも・・・

APOLLO29を設計、製作した変態の返事は最後になった。彼の内心はこうだった。

みんな、そんな気軽に成功させたい!というけれど機体をつくるのは自分だ!しかも同じことをする=失敗なので、全く新しい考え方で0からのスタートで設計→製作→打ち上げ→回収すべてをこなす。これがどれだけ大変なことか、みんな分かっているのか?

だった。変態はそのことをみんなに告げ、再度宇宙撮影をするなら、自分一人では完成までもっていけない。ヘルプが必要だ!と主張した。ところがどっこい、ボスの返事はこうであった。

この短期間で成功させるためには、一人の人間がすべてを背負いやりきらなければならない。周囲の人間はいろいろ言うが、言う側の人間になるか、言われる側の人間になり責任を背負ってやりきるか、これは人生において大きな差だ。と。

後者のようなチャンスが与えれる時こそ結果を出し、やり遂げることは人生において大きなステップになると変態は考えた。そして気がついたら「宇宙撮影をやります!」と言っていた。

あいたたたぁぁぁ。。。笑(続く)

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  • この記事を書いた人

Kawamura Hiromitsu

「教育」21年間公務員として教鞭をとる→「モナコ滞在」にて映画のような日常を知る→起業し事業を営むかたわら社会貢献活動にも力を入れている。モナコをはじめヨーロッパと日本を行き来する生活を送り人生を愉しんでいる。

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