宇宙からのプロポーズ

アポロが行方不明?!

その手を離れたAPOLLO29は勢いよく上空へと舞いたった。若干の風に流されながらもドンドン上空へ。2m50cmの風船がみるみる間に小さくなっていく。時間にして1分くらいだろうか、雨が止んだとはいえ雲は低空に位置し、その雲の中に手品のようにAPOLLO29は消えていった。

この時、若干の嬉しさと大きな期待、不安を皆が抱えた。もう我々はAPOLLO29をコントロールすることはできない。APOLLO29に委ねるしかない。祈るような気持ちだった。

この時、我々は2つのグループに別れていた。一つは打ち上げ班、もう一つは回収班である。予定飛行時間は2~3時間。上空ではジェット気流で流される。極秘?!シュミレーターにより回収地点は、数十キロ離れた場所になることが想定された。なので、回収班は予め回収地点に移動をしておかないと降りきたAPOLLO29をキャッチできない。そのため、回収班は先発隊として既に回収予想地点へ向け出発をしていた。

打ち上げ班と回収班のやり取りは、Facebookメッセンジャーを使ってリアルタイムで情報を共有した。APOLLO29が打ち上げられた事実は、すぐさま回収班に伝えられた。回収班は位置情報解析装置?!(無線電波を受信するためのアンテナとパソコンだけだが)にて位置の特定にあたった。

解析結果によると2~3箇所の位置情報が打ち上げ班に返されてきた。

???

先ず1箇所目。ほぼ打ち上げ場所。打ち上げた場所から半径50m以内で、詳細をたどると打ち上げポイント横の建物を指している。ということは、打ち上げ後直ぐに風船は破裂し落ちてきたのか?それとも打ち上げ時のデータが残っているだけなのか?

因みに無線のシステムは、1分間に数回(回数は忘れた)にわけて定期的に通信する設定になっている。その通信電波には発信位置情報が含まれているので、その情報から居場所を特定するという仕組みである。

我々は打ち上げ後、POLLO29の行方を目視で確認をしている。近くに落ちたとは考えにくい。が、その可能性も0ではない。屋根におちたのか??と解析ポイントや周辺をくまなく探しまくった。いくら探してもない。こんなに早く落下したのなら、落ちた時の衝撃音や何か手がかりがあるはずだが、何も見当たらなかった。

見つからない=ちゃんと飛行している

という期待感と焦燥感を行き来していた。

そして、捜索ポイント2つ目。
打ち上げポイントから500m程離れた場所である。打ち上げ後、すぐに落ちたとは考えづらかったが、500m離れた地点なら考えられなくもない。しかし、そのポイントは身の丈以上の草むらの中心地だ。いや、とうもろこしだったか記憶は怪しいが、とにかく2m以上あり、それらを両手でかき分けて一歩一歩進む感じだ。目の前には草しかなく1m先に何かがあっても見えない状態である。そこを我らがボスとプロポーズをする予定の男2人が突入した。

3歩くらい進むと姿は見えず、もう声しか聞こえない。

「ありそう?」

「ない」

「ありそう?」

「ない」

のやり取りを繰り返しながら、数分後エライ勢いでこちらへ出てきた!

えっ!APOLLO29が見つかったのか?とその様子に一抹の残念感を感じた。見つかったら良いようなものだが、ここでの一抹の残念感とは、もし見つかったことは、イコール宇宙撮影に失敗したことを意味するからだ。

でも、出てくる姿が何かおかしい。エラク急いでいるのだ。何かと思えば蜂の巣があったらしい。かき分けかき分け入っていくものだから、蜂の巣の存在に気づかずヒットしたようで、もう少しで大群に襲われるところだった。

そんなことでこの場所からは引き返したが、この辺りにAPOLLO29はないことは感覚で分かった。

で、もう一度無線電波から位置を割り出そうと試みた。無線機から送られてくるデータが統一性があれば現在地が特定できるのだが、バラバラである。

とにかく、可能性のある草原を靴がビショビショになり靴擦れを起こしながら探し回った。

が、見つからなかった。。。(続く)

スポンサーリンク

  • この記事を書いた人

Kawamura Hiromitsu

「教育」21年間公務員として教鞭をとる→「モナコ滞在」にて映画のような日常を知る→起業し事業を営むかたわら社会貢献活動にも力を入れている。モナコをはじめヨーロッパと日本を行き来する生活を送り人生を愉しんでいる。

-宇宙からのプロポーズ

S