
このプロジェクトのクルーメンバーは最終29名となった。そしてこのプロジェクト名は「APOLLO29計画」とボスにより名付けられた。
打ち上げ決行日は8月11日。天候により前後する。
その予定にあわせ、いよいよ東京にクルーたちは集合し、先に説明したとてつもなく大きいモーターホーム「ジェームズ」で北海道にむけての旅が始まった。
打ち上げに携わったクルーは我々のボスを含め10名程度であった。ボスを囲みその10名でどうすればこのプロジェクトを成功させられるか、充分に準備してきたとは言え、まだまだ未知数な部分も多くジェームズの中でやりとりが続く。
言い忘れていたが、クルーが一同を介して集まったのは、この時が最初である。それまではFacebookメッセンジャーやスカイプなどをつかってのミーティングをしていた。車内では最終のつめを皆で熱く語った。風船ロケットの話だけではない。クルーメンバーそれぞれのこれからの人生についても真剣に話す充実した時間だった。
そう、我々は複数のことを同時にやるのが好きだ。プロジェクトのことだけでなく、せっかく仲間が集まったのである。未来についての話をたくさん語った。
エームズは夜通し走る。夜は休み時間なんて考え方は一切ない。全てがオンタイムだ。もちろんトイレ休憩くらいはするが走り続ける。と言いつつも我々はこの瞬間の全て活用して遊びたい。なので、休憩という概念はないが、ご当地グルメやその瞬間にしかできないことには、最大限味わいつくすのだ。
北海道に入道して「お昼は何がいい??」のボスの一声。クルー達は口々に好きな食べ物を言う。みんな自分を主張することが好きだ。主張しなければ集団に埋もれる。これは日本から世界に目を向けても同じことが言える。我々は常に日本という枠を越えた考え方をするよう習慣づけている。
そして多くのクルーは「お寿司!!!」と叫んだ。
その次の瞬間、スマホを片手に皆、お寿司の美味しい店を探している。行動が速い!
検索には条件があった。お寿司が美味しいことと、巨大なジェームズが停められること。
スマホの検索機能を使ってお店を探すワケだが、クルーの中には写真から読み取る情報キャッチ能力に長けたものがいる。それが卓越した人物は写真を見ただけで、お店の料理の味がわかるのである。凄い能力だ。そして数ある寿司屋の中から一件を選びハンドルをきった。
そこは北海道であったため駐車に関しては取り越し苦労だった。が、その寿司屋の前にジェームズを停めた瞬間、人だかりである。こんな田舎に何がきたのか?乗っているのは芸能人か?!と皆が見にきたのである。オーディエンスの期待に答えるべく、我々はかっこよくジェームズから降り立った。そう、我々は芸の能力には長けた集まりである。(笑)
案の定、お寿司は普通に美味しかった。
食事をしながらお店の大将との話が弾むのだが、我々が風船ロケットを打ち上げるために北海道に来たのを伝えると、大将の知り合いでロケットを飛ばした知人がいるから紹介しようか?という話になった。
多くのクルーは、是非会いたい!と答えた。風船ロケットの成功にむけて好材料を入手したいからだ。
で、そこでボスの一言。
「みんな、そんな人の話聞きたいんや」
(ボスはもともと大阪人なので関西弁が出てくることがある)
???
ボスは続ける。
「みんな世界で初めてのことをすのに、なぜ他人からアドバイスを受けるのだ?」
最もである。
我々は成功を足し算のように考えていた。成功させるためには今ある現状にプラス材料を加えていく。がしかし、そうではなかった。世界で前例のない初めてのことをするのである。成功させるために何が必要なのかを徹底的に考え必要なことをちゃんと準備することが重要である。人の意見に教えを請う姿勢ではいけないのだ。
このやり取りの中で、人の意見に左右されず、自分の意志を貫く大切さも学んだ。
お腹も満たされ、一路打ち上げ予定地点へ向かう。
寿司屋の一件でさらに気が引き締まった。
絶対、成功させる!!!(続く)