宇宙からのプロポーズ

チーム結成! するが。。。

そして、プロジェクト成功にむけたチームが結成された。名乗りあげたクルーは20数名であった。航空法などクリアするための法律関係、気象を調べ実行する時期や場所を特定、機体の設計・制作、GPSなどの通信関係、それらをまとめるプロジェクトリーダーなど分担をして成功に向け取り掛かった。

が、しかし、プロジェクトが一向に進まない。。。

なぜか、、、

風船ロケットをつくる人がいない!

大笑いである。我々のやり方は、できる目処を立ててから実行する。というこはしない。目標を定めできるところから、どんどん進めていき問題はその場で解決しながら目標を達成する。それが大事なことである。そうしなければ人生において成し遂げる数が極端に減るからである。なので、我々はやる!と覚悟を決めた上での見切り発車が好きだ。

話をもどす。風船ロケットがなければ話にならない。当たり前だが大問題だ!我々は前述のように風船ロケットを飛ばしたこともなければ、宇宙工学に詳しい訳でもない。いったい誰が機体をつくるんだ?!と笑い話のような状況になり、一人の男に矛先が向いた。「マリッジリングを皆でキャッチしよう!」と発案した彼だ。彼は発案はしたものの、プロジェクトチームには入っていなかった。そして彼に打診をしたところ、引き受けてくれた。

彼はその頃、皆から変態と呼ばれていた。なにも変体的プレーを好んでいるとか、そんなことではなく、変態的にものづくりをするのが好きなヤツだ。彼ならやれるかもしれない!と希望が見えた。

そして、変態はコツコツと毎日風船ロケットの機体設計から製作に励んだ。変態も仕事を持っている。作業は夜中に静まりかえった住宅街で、一人灯りをつけてモクモクとやるのである。怪しい!(笑)

製作を引き受けたものの、どのように設計すれば良いのか訳がわからない。宇宙は-50℃以下。撮影するためのカメラやデジタルフォトフレーム、GPSなどの電気製品が正常に作動するはずがない。+30℃~-70℃くらいまでの温度差に対応しなければならない。機体の重さは何キロ?何グラム?形状は?素材は?落下スピードは?帰還時に人の頭にでもあたったら人が死ぬかもしれないよね?!フォトフレームってどうするの?バッテリー作動するの?などなど。?しかない状態であった。

それら一つ一つをしらみ潰しに調べて実験を繰り返し、製作していくのである。

実験といっても、変態も素人だ。実験施設があるはずもない。-50℃の世界をどう再現するか?彼は大量のドライアイスを購入し、それに近い状況をつくり工夫をこらした。一時、彼の家の冷凍庫には電気製品が冷凍保存されていた。(笑)

そんなことを繰り返しているワケだが、どうやら彼には妄想癖があるようで、車を初めて創った人も同じように前人未到の分からないことしかない状態から一つ一つを検証し形にしていったんだろうな、と勝手に自分の経験に手繰り寄せてロマンを感じていたようだ。全然規模が違うのに。(笑)

説明があとになったが、ここで宇宙撮影の原理について簡単に話しておこう。原理はいたって簡単である。宇宙撮影をする機体の上に風船を取り付け宇宙に放つ。上空にいくほど空気が薄くなるので、風船は膨らみ続けて耐えきれなくなり破裂。地球の重力に引っ張られて落ちてくる。ただそれだけである。

究極の理想は、打ち上げた場所に一歩も動かず機体が落ちてくるのが理想である。

しかし、そんな訳にいくはずがなく。。。

シンプルな原理だからこその難しさもある。

風船なので天候や様々な条件、運に思いっきり左右されるのである。雲の上にはジェット気流が流れている。速いものだと秒速100m(時速360km)を越えることも。新幹線よりも速く風船が飛んでいくのだ。どこに飛ばされる予想が付かない。天候からの影響を少なくし、打ち上げ場所周辺に帰還させるには、できる限り速いスピードで打ち上げ、帰還させるのが良い。

しかし、これもまた矛盾する問題が。速いスピードで上昇させたい=風船への空気やガスをより多く充填しなければならない。そうすると成層圏に達する前に破裂してしまう。宇宙撮影ができない。

帰還時はパラシュートにより一定スピードを抑えて落とすのだが、速いスピードで宇宙から帰還させる=人や人家への危険が増す。軽い機体とはいえ宇宙から落ちて来るのである。相当な破壊力を持っている凶器だ。

そんなこんなを考えながら、風船へのガスや空気の充填量、パラシュート落下速度を決めていく。

因みに我々が使う風船は地上で直径2m50cm。宇宙では6mになるよう計算してガスや空気を充填しなければならない。それが狂うと成層圏まで届かない可能性が非常に高くなる。そして、入手するにもアマゾンでポチッとすれば手に入るものではない。特別な気象観測用の風船であるため一般には販売していない。日本で入手するには大学機関か公の機関からの認証が必要であった。その線も考えたが、仮にどこかの大学関係者にお願いするにしても、理由は「プロポーズは宇宙から」である。一般的にはなかなかに通じない話だろう。(笑)なので、風船はアメリカから取り寄せることにした。運良くアメリカに在住しているメンバーがエクスプローラーズクラブにはいたのだ。

開発秘話だけでも1冊の本がかけるほどだが、話を先に進めよう!(続く)

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  • この記事を書いた人

Kawamura Hiromitsu

「教育」21年間公務員として教鞭をとる→「モナコ滞在」にて映画のような日常を知る→起業し事業を営むかたわら社会貢献活動にも力を入れている。モナコをはじめヨーロッパと日本を行き来する生活を送り人生を愉しんでいる。

-宇宙からのプロポーズ

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